彼の前に近代栄養学の基礎を作ったのはカール・ヴォイトという人で(「栄養学の父」と呼ばれている)、彼は1日のたんぱく質の必要量を52グラム、と規定しました。これは現代の厚労省の規定ともかなり近いです(某有名ハンバーガーチェーンの一番小さなハンバーガーにもタンパク質40グラム含まれているそうですから、現代の食事で不足を心配するのはナンセンスなのです)。
そして、1900年代初頭にはアメリカで若い兵隊を実験台にして身体能力の高さを問う実験が行われ、「
なのに、なぜかそういう話は消えちゃった。
で、ルブナーさんはどうしてそう思ったかわからないんですが、「タンパク質こそ文明そのものである」と断言したんです。そして、タンパク質の必要量を1日52グラムから120グラムに上げ、植物タンパクから動物性タンパク質に置き換え可(そちらの方が質がいい)としました。
私が興味があるのは、どうしてルブナーさんはそんなふうに思ったか、ってことです。
「ルブナー」のスペルがわからないので日本語で検索したら、2ちゃんねるの菜食主義スレッドが出てきちゃって、そこの書き込みによるとルブナーさんは「そうじゃないと戦争に負ける」っていったそうです。
当時はビタミンの機能がやっと研究され始めた頃でもあり、たとえば脚気はビタミンB1不足から起こる、という仮説が出始めたものの、定説化してはいませんでした。日本では、この頃、ドイツ帰りの森林太郎という軍医が「脚気は感染症である、脚気を防ぐために兵隊には白米で栄養増強するのがよい」っていって、日露戦争では戦死者より多い病死者を出してしまったそうです。(鶴見隆史先生の講演会で聞いた。そして先生は、「森林太郎ってその後軍隊をやめて小説家になるんですよ。森鴎外っていう名前の」といって、場内が「ほお〜」っとなった)
1900年、つまり20世紀初頭というのは、世界中が帝国主義、植民地主義で「支配するか、されるか」の緊張に巻き込まれていった頃です。富国強兵です。この頃の栄養学はすべて「国力をあげるための栄養とは何か?」が考えられていたんじゃないかと思います。個人の福利厚生のための栄養学じゃなかったんです。
そして、「文明じゃない」ということは「列強の支配を受けても仕方がない」ということを意味し、そのために日本人も植民地化されないようにとちょんまげを切って牛鍋を食べて鹿鳴館でダンスを踊って頑張ったわけです。
その文明を作るものとは何か?
工業は鉄、エネルギーは石炭、そして栄養学は「タンパク質」だと考えた。そんなふうに当てはめていくと合点がいきます。
鉄があれば。石炭があれば。タンパク質があれば。「それさえあれば強くなれる」物質がこの頃の欧米列強は欲しかったんじゃなかったと思う。
この考え方は、「帝国主義」がいつのまにか「アメリカの民主主義」にお題目が代わった後でも引き継がれていきます。
帝国主義はエゴ丸出しだったのである意味まだ始末がよかった。民主主義になってから、「文明化されていない国を教化する」という名目でタンパク質の布教が始まってしまった。
「ベジタリアン」を説明したときに、一般の人が「タンパク質不足になるんじゃないの?」と心配するのは、「文明不足になるんじゃないの?」の不安だと考えると、すごく納得がいきます。
グスコー出版で現在翻訳作業中の「チャイナ・スタディー」の著者、コリン・キャンベル博士は、
酪農家の家の息子さんだったそうです。彼は、乳牛と羊を早く成長させるために、コーネル大学で研究し、博士号を取得します(このあたりは上記のアマゾンのレビューに詳しいので読んでください)。
「ローフードでは生のピーナッツを食べてはいけない」というのを聞いたことがある人も多いと思いますが、生ピーナッツにつく発ガン性のかび・アフラトキシンを発見したのがキャンベルさんです。
この発見をしたのは、彼が、フィリピンで栄養不足の子どもたちのケアをするプログラムに参加したことからです。1960年代、マルコス政権のころです。この頃はまだ「栄養不足=タンパク質不足」と考えられていた頃です。このときに彼はフィリピンの小児ガンの子どもたちを見て愕然とします。全員、富裕層の子だったからです。
動物性タンパク質を効率的に生産したいために栄養学の道を進んだ彼が、人生の大きなターニングポイントとなったこの現実に直面した後、彼は、たとえアフラトキシンであっても、動物性タンパク質を摂取しない限り発ガン率は極めて低いことを発見します。
つまり、彼の発見は、「発ガン物質がガンを作るのではなく」「発ガン物質が」「動物性タンパク質の摂取」という環境下に置かれたとき、「ガンが発生する」というものだったのです。
パプア・ニューギニアの喫煙率は極めて高いそうです。大家族で暮らしていますので、子供、女性の受動喫煙も濃度が濃い。ところが、パプア・ニューギニアでは肺ガンの発生率は極めて低いのです。そして、彼らは動物性タンパク質をほとんど食べていないそうです。
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『たんぱく質は身体の材料』『Caは骨の元』という考え方が小さい頃から植えつけられてきたわけです。
それが文明というのは面白いですね〜。。。
で、「低タンパクより高タンパクのほうが、身体能力は高い」っていうのがどうしても読み間違っちゃうんですが、、、
身体能力『だけは』高い?って事ですか??
頭悪くてスミマセン、、(汗
>身体能力『だけは』高い?って事ですか??
わはは。そうですね。
「身体能力だけを比べた」ので
「頭がいい」とか「顔がいい」かどうかはわからないです(笑)
『ローフード』の本読ませて頂きました。
とっても面白かった。ともさんの文体が好きです!!!
ところで唐突なのですが、あとがきにあるヘルパーさんの掌蹠膿疱症が良くなったというスムージーのレシピを教えて頂けないでしょうか。
私自身、長年、掌蹠膿疱症で苦しんできました。何をやっても今まで改善する事はありませんでした。
現代医療では不治で治療法が無いと言われています。
ぜひ、生活をローに変えて、自分の体で実験してみたいと思います。
完治とはいえなくても、改善するだけでも、他の掌蹠膿疱症の人達に素晴らしい朗報になると思います。
お忙しいところすみません。
よろしくお願いします。
私もたんぱく質は?カルシュウムは?と疑問に思っていました。
こんなに詳しく書いていただけるとよく解ります。
こんなに歴史や政治と食生活が関係していたなんて驚きでした。また違う角度から見れる事も楽しいですね。
今日もとても勉強になりました。
有り難うございます!では!〜〜ε=ε=ε=ε=┏( 菊・_・)┛
立川談志さんとの対談テーマが文化だったんです。
納豆は昔はみそ汁にしたのがマストで納豆と豆腐でみそ汁をつくっていたそうでそのくだりでたんぱく質のことが語られていました。
ローフードとは違うので恐縮ですが、読みながら自分の中では
こちらの記事とリンクしていてとても興味深かったのです
とくに、小林さんにとってグルメ(人)とは 野生の食べ物から美味しさを発見できる能力のある人 という下りがあって
ローフーディストたちのことだ!と感じてワクワクしました。
お返事遅くなりました。
>らみんさん、
掌蹠膿疱症スムージーはマンゴ、バナナ、ロメインだったんですけど、
別にそのためじゃなくて、旬だっただけなんです(去年の今頃)
今はりんごとかバナナ、あとベランダのセロリの葉が多くなりすぎてそれで作っていると思います。
話を聞くと代謝不良と関係がありそうなので
良い影響があるのではないでしょうか。
>かんたママさん、
はじめまして、コメントありがとうございます。
あれから考えてみたんですが、「国家」というものが
「加工品としての共同体」ですから
(価値が持続するようにする)
そこで何を食べるべきか規定されていくのは
当然かもしれませんね。
また、書いてみたいと思います。
>菊さま
そうですね、たとえば米もそうですけど、
「アイデンティティ」「DNA]とかいう
言葉で規定していたものを、
「本当にそれDNAなの?」と検証してみるところが
ローフードはおもしろいんですね。
>紗和さん、
納豆と豆腐の味噌汁ってローじゃないけどおいしそうだな。
私北島さぶちゃんが「永○園の納豆汁」の
CMをするまで、味噌汁に納豆を入れるって
知らなかったの(汗)
今は大豆重くてあまり食べないのですけどね。