「…あ、ふわりと見えた。」 にも書きましたが、ピンクの「ローフード」の本を書いていた間も含めて、ずっとひとりの男性が大好きでした。少しずつ自分の人生を生き始めて初めて、徹底的にバカになれた、キラキラする体験でした。今となっては、グリーンパワージューサーのかすもびっくりしちゃうぐらい燃えかすしか残っていないので、当時の気持には戻るべくもないのですが、ネクラで理屈っぽいコデブな文学少女だった私の人生に、ときどき「プレイボーイ」がからむことがあります。
中学生のときのその体験もそうでした。
両親共働きの自営業で年末になると忙しくなる我が家では、子どもたちは、冬休みになると、「そっちの方が安くつく」とばかり、スキー・キャンプに追いやられていました。
そこでは学校の枠を超えて、いろいろな子どもたちが集まるんですが、そこにもいたんですねえ。中学2年生なのに「プレイボーイ」の名をほしいままにしていた男の子。俳優の息子で、すらりと背が高くて、グループの中でダントツにスキーがうまかった(中2で1級をとってた)。他の男の子たちがモコモコのウェアを着ているのに、彼だけがスリムなパンツをはいて、トレーナーにダウンベスト、アポロキャップ、といういでたちですべってた(コーチよりかっこよかった)。キャンプに着ている女の子が全員、彼のことを好きでした。彼がどう思っているかも知らず、ケンカする子も出るぐらいで。
彼のお父さんは離婚していて、当時はまだ「離婚家庭」というのが珍しかっただけでなく、「お父さんと一緒に暮らしている」というなんて知り合いの中で彼だけだった。そのあたりが、ちょっと母性本能をくすぐらせる存在でもあったかも。
私も彼の姿にはドキドキしていたけど、当時の自分は、「女の子としてかわいい自分」というものにからっきし自信がなかったので(自信がない自分がそういう外見を引き寄せていた)、もっさりした外見に、「男の子のことなんか興味ないわ」という態度をとる、負のエネルギーいっぱいの女の子でした。
そのキャンプに行ったメンバーたちで、東京に帰っても同窓会をしようということになり、いろいろと電話で話す機会がありました。そのときに、一度だけ、彼と電話で話すことがあったんですね。
意外なことに、長電話になりました(当時から、口だけはたつ奴だったもので……)。そして、意外にも楽しかったことを覚えています。中身は思い出せないんだけど、結構本質的な人生論を話した気がする。
そのときに、彼がいったんです。
「スキー・キャンプでも学校でもいろいろな女の子と話すけど、正直いって、食い足りない。自分と同じ歳という感じがしない。みんなガキっぽく見えてしまう。でも、話していて、『自分と同じ歳』か、年上に感じる女の人がふたりだけいるんだ。それが、Sと、君なんだ」
うまいねー……。
Sというのは、女優さんで、プレイボーイ君が通っていた私立一貫校で2つ先輩にあたる人です。当時は、一世を風靡した中学校を舞台にしたドラマで、「15歳の母」という難しい役を演じて社会現象にもなりました。
当時はアイドルブームでしたが、かわいこちゃんのアイドル達とは、一線を画す演技派でした。
このプレイボーイ君の一言以来、女優のSさんは、私のアナザー・セルフとなり、いつでもどんな活躍をしているのか気になる存在になります。彼女の著書も読みました。安全ではない父親との関係に、ひかれた理由はそういうことだったのか、とも思わされました。
というわけで、今日、自宅にお招きしてお食事しても、全然初めてという感じがしなかったです。彼女の妹さんが、私の本のプロデューサーのきくちゆみさんと旧知の仲、というのもびっくりでしたが。

ちなみに、このプレイボーイ君の名前で検索したら、彼もブログやってました。 いまや、菜園が趣味で、朝バナナを実践してました。そういう時代です。