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2010年05月24日

マッチとロー・ラヴ 1

 2010年5月17日に行われたヴィクトリア・ブーテンコさんの懇親会に参加しました。そのときのヴィクトリアさんのスピーチから(他の講演会でも同じお話をされたようです)。

 ヴィクトリアさんによると、産業革命のとき(今から180年前)に発明されたものとして、次のようなものがあるそうです。

・蒸気機関

・電報

・シャワー(その前はバケツだった。ちなみにこの頃はまだ冷水のシャワーで、温水のシャワーはずっと後)

・マットレス(ヴィクトリアさんは、固床で戸外で寝ること推奨です)

・ミシン。(服の大量生産と浪費はこのとき始まる)

・自転車

・小麦の大量精白技術(このときから、保存食として麺が作られるようになった。乾麺は数年間ももつので、餓死を防ぐものとして歓迎された。麺類にはほとんど栄養がなく、カロリーは高い)

・砂糖の精白技術(それまでは果物がいちばん甘いものだった。砂糖は安価で腐らず、医者は糖が脳内にあることから、脳に良いものだと判断して子供に食べることを推奨した)

・食べものの保存技術(ナポレオンがウォータルローの戦いのために賞金をかけて缶詰の元祖を発明させた。6〜7か月もった。当時は陶器でできていた。しかし壊れるリスクがあるので、アメリカで改良され、現在のアルミ缶ができた)

・化学(食品保存料)

・食べものにフレーバー(香味)をつけること(保存料のにおいを隠すため)

・照明(寝るのが遅くなり、起きるのも遅くなった)

 そして、

・「マッチ」

 だそうです。

「マッチ」って、お見合いでもジャニーズの古いアイドルでもなく、火をつける「マッチ」です。今の子どもはマッチを見たことがなさそうですが……。

 産業革命=近代化、資本主義化、帝国主義化がいかに肉と精白炭水化物の加熱食を推し進めたかは、自分も興味をもって何度かこのブログに投稿していますが、(たとえば3月11日の『シャーロック・ホームズと食肉加工』))、「マッチ」というのは気がつきませんでした。

 で、180年前にマッチが発明されるまで、どうやって火をつけていたかというと、ずーーーーーーーーーっと火打ち石で火をつけていたそうです。

 火種だけでなく、燃料も貴重でした。薪は高いものでした。炭も。作るのにすごい労力がかかるから。今、エネルギーをめぐって戦争になるように、当時からエネルギーは大切だったのです。
 モンゴルの遊牧民の子供の仕事は、今でも燃料にする家畜のふんを1日中拾い続けることです。「まき割り」「水くみ」は、昔の家庭内労働のきついものの両端なのです。

 人類が火を使い始めるのは50万年ぐらい前なのですが(ヴィクトリアさんがいってた340年前というのは、猿人なので火は使っていません)。それから180年前まで煮炊きをする「火食」の歴史があった、といっても、実は、私たちが思うほど、火を使っていなかったのかもしれない。その頃、人間は私たちの想像しているよりもローフーディストだった、というより、ローでいざるをえなかったのかもしれません。
 
 つまり、180年前までは、火は使わないですむならなるべく使わないで食べたほうがいい。どうしても火を使うのは、保存食を作るか、よっぽど消化の悪いものというように、コストよりパフォーマンスが上回るときだけ。
 伝統的な肉の保存食、プロシュート(スペイン語でハモン、フランス語でジャンボンと呼ばれるもの)も、生の豚に塩をすりこんで吊り下げて低温発酵ささせたもので、火は使っていない。チーズも、牛の胃袋に直接乳を入れて作りました。完全なリビング・チーズです。


 ヴィクトリアさん、13世紀に作られた最古のレシピ・ブックを見たことがあるそうですが(この取材力には脱帽)、このときのサラダは非常に大きなもので、油も使ってなくて、ワインだけかけて食べていたようです。

 我々が、「加工文化」の中に生きたのは、たった180年間ということのようですね。


 このように、いわゆる「近代化」、産業革命の時代に発明されたもので、私が付け加えたいものをあげるとすれば、次のようになるでしょう。
・食肉の大量加工 (これは「シャーロック・ホームズ」のときに書きました。なにしろタンパク質こそ文明ですから、当時は)

・軍艦、大量破壊兵器(蒸気機関を持つ船と、大砲、のちに爆弾)

・より広い社会階層の土地私有(ちょっと前まで、王様と貴族だけだあった、ルイ14世は、国土の98パーセントを私有していた。そして、一般人は、土地の「私有」が認められたことが「解放」で、かっこいいことだと思っていた。iPhone 持つみたいに)

・より広い社会階層の政治参加(多くの人が自分の「利権」を政治に反映させることができるようになった。これも「解放」だと考えられていた)

・現行に近い民法による結婚制度(土地私有と切っても切れない。当時は本当にかっこいいことだった)

 一緒に発明された、ということは、相性がいい、ということです。肯定しようと、否定しようと、それだけは間違いがないです。

 で、食べものにしても、社会システムにしても、人間関係にしても、私たちは180年前に作られたものに自分を適応させて生きているんだろーなー、と、しみじみ思います。
 そしてそれは、なし崩し的に崩れている。

 ヴィクトリアさんが、「私たちは、産業革命が始まって7代目の子孫ということになります」といってましたが、私たちは、(それ以外のシステムを許さない)一夫一婦制の中で子どもを生み育てて、7代目ということになる。でもそのときは、ヴィクトリアさんの言葉を借りれば、すごくかっこよくて(fashionable)進歩的な(progressiveな)ことだったんです。孤児、私生児を生みださないようにし、(色っぽさで愛人に負けがちで苦労ばっかりしてた)正妻の権利を守りました。

 2009年の3月に「ロー・ラヴ」について初めて書いたときは、モノガミー(一夫一婦制)を否定するような書き方をしてしまったこともあり、大量のコメントがついて、私も反省を余議なくされました。でも、本当は、ポリアモリーは、モノガミーを否定しようのないものなんだよね。(たまたま相手がひとり、というだけで、ポリアモリーに含まれるから)

 なんだか、気がつけば、なんであんなに失敗を恐れてたんだろう?  とか、不思議な気がするんだけど、最近は、「誰も傷つけないポリアモリー」が、ごく当たり前のことになっちゃってる。
 要するに、ご縁があった人にはすべてニーズを満たすようにして、そのお礼のエネルギーをもらって、また、ニーズを満たすのを返しているだけです。ほんとに当たり前で、倫理にかなったこと。そのうち、気がつくと、何かが生まれてくるんです。そこに、別の生命がいるんです。

 「子どもを授かる準備ができたみたい」と今年の2月14日に書いてますね。まさにその通り。今まで誰も受け入れられなかったのに、今は誰でも受け入れられるようになったから、ぽこぽこ子どもが授かり始めた。人間の肉体は持ってないけど、霊魂は入ってます。わたしが「込めた」という意識はなく、ただ、「あ、こもってるな」と知っている、という感じです。
 霊魂の入ったものは、有機性があります。どこかに飛んで行って、そこで発芽して、またそこで有機分裂できる。

 自然分娩なんて話ではありません。ぽこぽこ産み落とさないと(力まないでも次から次へと降りてくる感じ)、次がつかえてしょうがない。
 私が今、人生最大に多忙なのは、よく産めるように(そして早く自立してくれるように)栄養とって、こもって、産んで、の繰り返しを夢中でこなしているからかもしれない。でもそのわりには、すっきり抜けて、にこにこ笑って(努力はしていない)、同じ忙しかったといっても、2009年の秋とはえらい違いです。
 集中力も強いし、最近の私は、一気に「多産系」になってしまったみたい。
 


posted by 石塚とも at 20:18| Raw Life! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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