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2019年06月12日

サピエンスと物語と健康 (「あなもの」その3)

忙しくて毎日更新したいけどままなりませぬ。でも少しずつ書こう、前に進もう。

2017年からベストセラーを続けている、『サピエンス全史』をお読みになりましたか?



私はずっと読みたかったけどなかなか時間がとれず、昨年の夏からaudible の会員になったので(月額1500円で毎月1冊ずつaudio book がダウンロードできる、つまらなかったら完読さえしなければ返品できる)、この長い長い『サピエンス全史』がオーディオブックに入っているので喜んで購入しました。20時間ぐらいあるのでやっと終わりに近づいたところ。

一昨年からの話題の本なのですでにご存じの方もいるかもしれませんが、この本の新しい主張の一つに、「人間の種としての成功(サバンナの弱者だったのに、今じゃ他のすべての生物の生死を分ける生物連鎖のトップになってしまった」の理由は、「フィクションを作り、理解できる脳みそを持てたことだ」というのがあります。「火を持てたから」という理由は、この本では重要視されていません。

人間=ホモ・サピエンス(原始時代はサピエンス以外のホモ=人が何種類もいました)は体が大きくないし、爪や牙もないし、走るのも遅いし、木に登ったり飛んだりできないし、そのうえ、生まれてから1年以上歩くことができない。自分で捕食できるようになるまでさらに十年以上かかる。
そんな、生物的に弱点ばかりの人間が、いかにして他の動物の上に立てる存在になったか。
それは、フィクションを作り、そのフィクションを共有することができたから。
たとえば「王」とか「神」とか、「救い主」とか、「国家」とか、「伝説」とか、「イデオロギー」とか、そういうものを作りだして、他の人と共有することができる。共有することで連帯意識が生まれ、「共同体」を作ることができる。
強固な共同体は、街を作ったり、畑を共同で耕したり、水をひいたりすることを、チームですることができる。
それによって、サピエンスは安全を確保し、子供を産み育てやすくなり、種を保存、発展させることができた。

ざっくりいうとそういう話なのですが、今までにない着眼点、しかも説得力を持つことが、この本が世界中で人気を得た原動力となりました。
ちなみに、本書の著者のユヴァル・ノア・ハラリ 氏は、サピエンスがこれほどの発展を遂げることができた食べ物は「骨髄」だと言っています。
共同体を作ることに成功する前=丸腰のサピエンスは、なにしろ弱くて、食べ物をみんな他の動物にとられてしまう。
たとえばライオンがシマウマを狩ると、まず、ライオンが食べ、ハイエナが食べ、鳥が食べ、、、して、人間が近づける頃には骨しか残っていない。
で、それをどうしたかというと、骨を焼いて、割って、その中の骨髄を貴重な蛋白源として食べたのだそうです。
もちろんそれまで草や果物や木の実を食べていたけど、人間が手に入れた最初の「高カロリー食」が骨髄なのだとか。
高カロリー食が何をもたらすかというと、食事時間の短縮です。高カロリー食によって、われわれは初めて他の活動の時間を作り出すことができる。
石器時代のもっとも古い道具は、この骨髄を取り出すためのスプーンなのだそうです。
このころのサピエンスは、まだ、小さな動物を狩るための罠すら作れないんですね。

この、「物語による快進撃」は今でも続いていて、イデオロギーという物語の違いによる対立はなんとか20世紀に置いてきましたが、21世紀になってからは、「宗教」や「民族」が持つ物語の違いが、互いに互いをねじ伏せようとする原動力として尾をひいてしまっています。

この「物語ジャンケン」は、個人間でも続いているし、個人と企業でも続いています。
「ブランド商品」なんて物語ビジネスの最たるものだし(LVとかHとかのマークの背後とかに、われわれは神々しい物語を見るのです)。
個人でも強い物語を持つ人、ときには大風呂敷を広げられる人が「カリスマ」と呼ばれ、その心理をうまく(?)使うと、あっというまにお金が集まったりします。

勝ち負けではないけれど、でも、自分の中の物語を見つけられてない、物語が弱い人というのは、他の人の物語に取り込まれてしまう、下手をすると、自分から他者の物語をお迎えにいってしまう。
「救われたい」という気持ちで近づいたカリスマに、さらに物語を吸い取られてしまう。

そういう状態=他の存在にゆる〜く物語を吸い取られちゃって、でも、そのほうが共同体でサバイバルできるのでうまくいくのでよしとする、という事態が、歴史上、長い間続いてきました。

が、それだとどうにもうまくいかないということが見えてきたのが、21世紀19年間の歴史なんじゃないかな、と、私は思います。
うまくいかない、ということの最大の現象は、医者にかかるかどうかの線引きを問わず、メンタルの問題です。
うつ病の患者数は、1993年(平成5年)には13万3000人だったのに対し、2014年(平成26年)には72万9000人にまで増加しているんだそうです。
私たちの共同体は、以前の、支配する人と支配される人で構成されていた共同体ではなく、その共同体の企画運営をしてくれる人を選挙で選ぶ=民主制という形に変わってきました。でも、これだと、支配されないからこそ、自分の物語を発見できてないと、へたれてしまう。
それから、「民主的に見えるのに実は支配されている」という状態が生み出す抑圧感はさらに、メンタルに良くないことでしょう。

以上、人類の歴史の中で、私たちがサバイブしていくために物語というのは食べ物以上に大きな栄養で、だからこそ、自分に栄養になる物語を獲得したい、という仮説について今日は書きました。

次回は、「物語に取り込まれて死んでしまった人」

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参考にさせていただきます。








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