https://amzn.to/40M28Oq
奇子 2
https://amzn.to/3VdKjGO
奇子 3
https://amzn.to/3Hn23tC
Quora で紹介されていることが複数回あり(それも、単純に「オススメ」とはいえないひどい話として)、興味を持って読んでみたのですが…。手塚治虫のすごさを存分に感じさせる作品で、今更ながらに驚嘆してしまいました。
奇子(あやこ)は、家族の秘密(殺人)を目撃してしまったために、5歳になる前から蔵の地下に閉じ込められてしまい、十数年後、社会性(とくに「性」に対する)を持たぬまま成長して、蔵を抜け出す、という、ショッキングな運命をたどります。ここだけで、いろいろ言いたいことがありますよね。こういう「座敷牢」って、昔はそんなに珍しいことじゃなかったんだろうな、とか。
しかし、タイトルロール・奇子の運命は、ショートケーキのイチゴの部分でしかなく、それが欠けたらたしかに味気ないけど、スポンジケーキと生クリームの重厚な土台が、この作品をしっかり支えています。濃厚な土台があってこそ、イチゴのアクセントが生きるのです。
戦後、生き残るために捕虜収容所で仲間を売ったあげく、GHQのスパイになることと引き換えに退所を認められて帰還した日本兵、その実家(東北地方の豪農)が戦後の農地解放によって土地を失い、衰退していく運命、そんな家の中で起こる内紛と権力争い、さらに、日本全体で起きているレッドパージ、未だに自殺か他殺かもわからずお蔵入りした下山事件(アメリカ占領下の昭和24年、国鉄総裁が疾走、雨の中轢死体で発見された)…など、1つだけで作品になりそうなプロットがいくつも絡み合います。後味の悪い話がどんどん進んでいくのに、え!という方法で全部ひっくり返してカタルシスに導くラストも見事です。
前回の「焼け跡の白鳥の湖」のときに「なんの本を読んでも今の歴史とつながっていると思うことが多い」と書きましたが、この本もその1つです。ひとことでいうと「精算できてない」。なんとなくうやむやにして1日伸ばしにしてきたこと(もしかしたらそう望んでたのかもしれない)が、今、しっかりと、ある意味「実を結んでいる」。といえなくもない。
…が。このラストが示唆するものはなんだろう??
【関連する記事】
- ブックストア記事『はじめてのバレエ・レッスン 1バーからセンターへ』『2アレグロ..
- ブックストア記事『永遠の旅行者(上)(下)』
- ブックストア記事『総理通訳の英語勉強法』(講談社現代新書)
- ブックストア記事 折りたたみ式踏み台
- ブックストア記事 モニターの高さ調整のために使う、ヨガブロック(なのでどこのメー..
- ブックストア記事 半永久的に使えるノート A5 NEWYES スマートノート 耐..
- 書籍記事 独学大全――絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法
- 書籍記事 焼け跡の「白鳥の湖」ー島田廣が駆け抜けた戦後日本バレエ史 (文藝春秋企..
- 書籍記事『家庭科3だった私が365日、手作り服で暮らしています。』 (美人開花シ..
- 書籍記事 「子供を殺してください」という親たち バンチコミックス