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2009年06月08日

データが勝手に壊れた(いろいろ考えたら)

 穀物とお金シリーズ、第5弾です。ひとつ前の時に「5回シリーズで終わる」と書いたのですが、6回にします(笑)

 そもそも、お米の話でどうして私がここまで突っ込みたくなるかっていうと、「お米」ってものに対して、ある日突然、「保守」「革新」(いや、「右」「左」というべきか?)が変わったように思えて、それでついていけなかったことからなんです。

 私は「週刊金曜日」という、「市民派」というか「左より」というか「反権力」というか、そういう人たちが愛読している週刊誌でときどき映画評論を書いているのですが、執筆した時に送られてくるそれを読んでいると、どうしてこんなに日本の「反権力」はお米が好きになっちゃったんだろう? と不思議に思ってたんです。

 20年ぐらい前までは、農業と自民党は切っても切れない関係にあり、自民党は国内農業を守るものでした。wikipedeia の稲作のところ見てもらうとわかりますが、「水田は票田」とはっきり書いてあります。そもそも天皇が米教の最高位にあるんだから、日本の右翼は国内農業保護でないといけない、はずでした。

 それが変わるのは1988年です。戦後発展を続けて、ガリバーのような経済大国になってしまった日本にアメリカが突き付けたのが農産物自由化でした。(このNHKスペシャルの紹介が参考になります)。

 「農業を守るのが市民派」の時代がもはや20年も続いたので、私とほかの人との感覚はずれてしまったのかもしれません。
 …っていうか、私、食事の好みが「戦中派」だったんだわ(笑)。
 今でこそ、自給率をあげて国力を守るのが「社会の是」になっているけど、1970年代ぐらいまでは、「パンとミルクこそ個人尊重の食べもの、民主主義の食べもの」で、「お米はお上に唯唯諾諾と従う人々の食べもの」って思ってた人、ほかにもいると思うんだけどなー。最近じゃ輸入小麦のパン食べるのは市民派のすることじゃないから(笑)、消えちゃったのかしら。

 私が子どものころは、「お米を作るのがいかに大変か、お百姓さんにどんなに感謝しなきゃいけないか」とうとうと聞かせられるのが本当に嫌だったんですけど、なるほど、日本でお米を育てるのは大変だと思います。なにしろ、お米は日本では「育てる」ものだからです。ベトナムに行くと、「米を育てる」という言葉がなくて「米が育つのを見る」という言葉しかないそうです。ラオスに行くと、「米が育つ音を聞く」という言葉しかないそうです。できるところでは、米は果物と同じで「勝手にできる」のです。「手をかける」ことも「お百姓さんの苦労」も、「一粒に八人の神様」もいらないのです。
 
出典はこの本。もしくはその続編。


 さてと、そういうわけで、長々と私の心の中のデータ探しの旅におつきあいいただき、ありがとうございました。

 「お米」という、日本人にとって愛憎交わる感情を抱かせられる食べもののことを考えているうちに、「米は米、それ以上でもそれ以下でもない」みたいな気持に気がつけばすっかり落ち着いてきたのです。
 米を特別視する感じ、ましてや日本人のアイデンティティ(=データ?)と結びつける気はないですが、とくに抵抗する気持ちも消えたころ、「生米を食べる」という新しい食べ方に私は出会ったのです。

 「穀物とお金」シリーズは、あと1回で終わりにします(そのつもりです(汗)

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posted by 石塚とも at 21:56| Comment(3) | 穀物とお金 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「たわけ」な文化?

 「穀物とお金」シリーズ、第4弾です。
 このシリーズは第5弾で終わりですが、「ちょっと哲学的なこと」カテゴリーから独立させてあらたにカテゴリーを作りました。

 ローフードレシピについての印象で、ときどき、「アメリカ的」「日本的」というような分け方を見ることがあるんですが、これはあまりちゃんと事態を説明している言葉ではないと思います。

 というのは、まず、アメリカで生まれたローフードのレシピの大部分が「アメリカ的」とはいえないということ。
 どちらかというとコスモポリタンで、アジア、中東など、「伝統的なアメリカ料理」からは離れていると思います。
 しょうゆやみそや海藻、ごま(タヒニ)などをしょっちゅう使うローのレシピはむしろ「西海岸的」「東海岸的」といったほうがよく、、内陸の人たちは、これらの食事を「アメリカにはアメリカのよい食事があるのに、アジアからわざわざ輸入したかっこつけた食事」と思っているかもしれません。
 
 なので、ここでは、アメリカのローフードレシピに書いてあるようなローフードを「外から入ってきたもの」、いわゆる日本の伝統食を「内側のもの」という呼び方をすることにします。そういうことがいいたいんじゃないかな、と思うので。

 外側から入ってきたものに対して、人は身構えます。それは「異物」だからです。
 で、「異物」に身構えることで困るのは、そうすることで、実は「内側にもあなたを傷つけるもの」があるのに、それが見えなくなることなんです。
 というか、コインの裏表で、「内側の自分を傷つけるもの」を見たくないから外側の異物を「自分の敵」と位置付けたい気持ちが、強く働くのかもしれません。

 お米のすごいところは麦よりタンパク質が多いので、ほかにタンパク質をとらなくてすむし腹もちがいい(消化が悪い)ということです。おなかの中にあってまで価値保存されるんですね。ふつうのお米よりさらにタンパク質を強化して、濃厚な味と腹もちをよくした品種もあります。これを、腹「もち」がいいので「もち米」と呼びます。

 そんなにすごい価値保存能力があるので、集団でお米を作り始めた人の中には、この米を税として徴用しよう、という人が出てきました。
 いや、お米を伝えた人たちはゴールドラッシュのアメリカに来たように、日本の土壌を見て米を作って一旗揚げようと考えたのかもしれないです。人間の歴史の行動パターンを見ているとそっちのほうがありえるんじゃないかと思ってしまいます。

 日本でも貨幣は生まれましたが、明治時代までは米が税金であり、米が政府からの給料でした。だから、お百姓さんたちは、冷害でやられちゃうのに、自分たちの口に入らない米を作り続けるしかなかったんですね。あらら、国内で、今のアフリカやインドネシアのような人たち(国外に輸出する作物を作るために、自分たちの口に入らないものを作り続けている)人達がいたんですねー。
 もっといえば、「米さえ作らせない」人という階級も作りました。

 それで思い出したんですが、律令時代(飛鳥時代〜。律令制そのものは江戸時代まで続く)。お手本にした中国の法律にはないけど日本にはある刑罰があるんです。それは、犯罪者に罰として「肉を食べさせた(=穢れさせた)」んだそうです。「肉を食べない人=穢れてない人」という優越感があったんですね。そこまでいくと、どっちが暴力的な人なんだかわかりません。

↓この本の102ページに書いてあるそうです。
(情報提供、マイミクけいすけさん)


 お米は日本人の感性に影響していると思います。日本語で、「ばか」のことを「たわけ」と呼びます。これは「田分け」つまり、自分だけの田を縄張り作って個人主義でやっていこうとする人のことを指します。お米が野菜より作るのが大変かどうかは諸説ありますが、少なくとも野菜は一人で作れますが、お米は共同作業しないと作れません。だから、田を分けようとする人はばかなんです。個人の気持ちより周囲との協調を優先するマインドを維持してないと死んじゃうんです。

 そういうことを、私たちは知っているはずなんですが(このブログを面白がって読むような人なら、一度は、【日本的】な個人封殺社会にげんなりしたことがあるのではないか?)、「外からの異物」が入ってきたとたん、突然、「内側であなたを傷つけるもの」は見えなくなってしまう。

 人間には、そういうところがあるんじゃないかなと思います。

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posted by 石塚とも at 21:03| Comment(0) | 穀物とお金 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月31日

日本人が肉食だった3万年

 「穀物とお金」シリーズ、第3弾です。

 なんでこのシリーズを書こうと思ったかというと、「ローフードは『自分が主役になれる食べもの』だ」って以前書いたけど、「自分が主役になる」というのは、自分の身体、心とともに、「頭もクリアーになる」という点にフォーカスする事例が少ないので、それを書きたいなーと思ったからです。

「頭脳の面から自分が主役になる」、つまり、「自分の頭で考える」ということ。
 なので、「私の頭で考えるとこうなるんだけどなー」と思うことを、書いていきます。

 ええ、日本人は狩猟肉食だったんですよ。1万年〜3万年ほど。
 ご存知でしたか? 
 
 あ、その前に、大訂正です。中学校の歴史では米が入ってきたのは弥生時代と習ったんですが、最近は弥生時代の年代がどんどんさかのぼるようになっていて、さらに、縄文時代の遺跡でも米が発見されたりして、稲作は6000年ぐらいさかのぼれるそうです。ただ、外来種であることに間違いはないです。中国雲南省(ビルマに近いあたり、亜熱帯)といわれています。(ちなみに、ひえ、あわなどの雑穀も外来種ですがこちらは中央アジアです)

 で、とにかく縄文人が日本人だと考えれば、縄文時代といわれる1万6500年ぐらい前から3000年ぐらい前まで(紀元前10c)、1万年以上、日本人は狩猟民族でした。シカ、イノシシだけだけでなく、象(そんなのいたんかい! ナウマン象か?)水牛(そんなんいたんかい!)も狩ったそうです。なかなかワイルドだったんですね、日本人。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B8%84%E6%96%87%E6%99%82%E4%BB%A3

 縄文時代以前の前土器時代にも、矢じりなどが発見されています。この時代が2万5000年ぐらいだそうです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%88%97%E5%B3%B6%E3%81%AE%E6%97%A7%E7%9F%B3%E5%99%A8%E6%99%82%E4%BB%A3

 ちなみに縄文時代は穀物はほとんど育てていませんでしたが、クルミやどんぐりの木を植える、ということはしていたそうです。

 で、弥生時代になると、狩の習慣は消滅、に近いといえるほどマイナー化します。人間は、動物を狩るより穀物を育てることを選びます。

 あれー、へんだなー。と、「私は」「考える」わけです。「私は」ですよ。あなたの頭はどうか知りません。

 動物を狩ることをやめて穀物菜食になったのに、どうして戦争ばっかり増えるんだろうかと。

 そのXに、「価値保存=副作用としての恐怖感」を入れると、式がとける気がしたんです。

 つまり、肉食であっても、それを「狩って」いるかぎり、価値保存できないし(腐るしすぐになくなる)、利殖性もない(増えない)安心感はない。
 だから、先行き不安だけど、そのぶん、「神様がくれた運命」」として受け入れることができる。狩れないものはどうしようもない。

 ところが、穀物栽培を覚えて、食料を安定供給することができるようになると、運命を自分たちの手でコントロールすることができるようになる。
 「いつでも出して来て、いつでも食べられる。植えれば増える。もう神様まかせでなくてもよい」。

 ところが、
 稲作が安定したのと時を同じくして、「国」が生まれ始めます。
 せっかく安定した食糧供給が、税として徴収されてしまう。そこから「権力」が生まれ始めるのです。

 そして、その権力と権力が覇権争いを始めてしまうのです。

 あーあー、またエデンの園から一歩遠くなってしまいました。


 米というのは、結構ブラッディな作物であります。


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posted by 石塚とも at 22:59| Comment(4) | 穀物とお金 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月29日

穀物とお金2

 私の妹には子どもが3人いるのですが、一番下の子どもが幼稚園のときに、

「よーく考えよー
 お金は大事だよー」

 って歌をどこでも歌うので恥ずかしい、といってました(笑)。

 では、お金はどうして大事なんでしょう。

 それは、お金に「価値保存性」があるからです。
 価値が保存されるということは、腐らないということです。

 食べものだったらいつか腐るけど、お金に変えておけば腐らないから、お金は大事にされるんですね。

 食べ物は栄養があるから価値があるわけですが、その価値が腐らないように「究極の防腐加工」をされたものがお金なのです。

 必要になったときに貯金箱から出して来て食べものと交換することができるんですね。

 便利ですね(笑)。

 ローフードだったら、手に入ったときは食べきれないぐらいあっても保存しておけないし、手に入らないときは飢えるしかない。
 
 で、穀物栽培して初めて人間は「価値が保存できる」ということを知るんですね。

 実は、野生動物はローフードばっかり食べているけど、保存できる価値は保存します。犬は土を埋めるし、ハムスターは巣にひまわりの種をためるし、りすも巣にナッツをためます。動物の方が人間より貪欲でない、というのは、嘘です(笑)。ライオンが動物の内臓をためておかないのは、ためておいたら腐っちゃう、という理由だけです。(ちなみにライオンは水分たっぷりの内臓だけ食べて筋肉は残しますが、筋肉が炎天下に放置されてほどよく発酵したころ、ハイエナが食べに来ます。ライオンがローフーディスト、ハイエナがリビングフーディスト、というわけです)

 で、価値保存できるお金が大事にされるようになったのはごく最近のことで、とくに日本では、政治と経済を動かすのは「米」でした。
 米もお金と同じように、「価値保存」できて、しかも「利殖性」(増える)があり、さらに「現物」でした。
「現物」というのはすぐにすぐに「食べ物」という本当の価値に変えられるということです。
 お金には大きなリスクがあります。それは、いざ、食べ物に変えたいときに食べものがなかったら変えられない、ということです。だから、昔はお金は信用されなかった。米の方がお金より強かったのです。(現物経済>貨幣経済)

 150年前まで、官僚(武士)の給料は、「米」で払われていました。
 100年前(大正時代)、米の値段が高騰したため、庶民は米屋に丸太持って突っ込む「打ちこわし」を敢行しました。当時は飢えた人々は「銀行強盗」はしなかったのです。価値は「貨幣」より「米」にあったのです。

 で、お米(穀物)には、「いつでも取り出すことができる」という素晴らしい価値保存性があるのですが、そこには、価値保存できるゆえの「副作用」が含まれていることに、人々は気付かなかったんじゃないかと思うんです。(私もローフードを食べ始めるまで気が付きませんでした)

 それは、「価値保存できれば安心できるに違いない」と思って価値保存を始めたのに、なぜか、価値保存すればするほど、不安になっちゃう、ってことなんです。

 ローフード摂取が減りますから、精神を安定させる代謝酵素が無駄遣いされた、っていっちゃえばそれまでなんですが(笑)、

 でも、「価値は保存できる」ってことを知っちゃったとたん、「これで安心だ」じゃなくて、「もっと保存しないとやばいんじゃないか」っていう発想が出てくるようになっちゃったんですね。

 あーあー、エデンの園からさらに遠くに来てしまいました。

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posted by 石塚とも at 23:15| Comment(4) | 穀物とお金 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月24日

穀物とお金1

 あんまりお米食べるのが好きじゃなかった私が今のところ一番気に入ってる食べ方は、浸水させて発芽させたお米を、そのまま食べること。かみかみかみかみ、奥歯でよーくすりつぶして食べるのが気持ちがいいです。今度は味付けしてみようと思います。

 それはさておき、お米について、みんな、あんまり知らないんじゃないかなーと思うことが一つあります。

 それは、お米というのは、3〜4世紀(弥生時代)に人の手で持ち込まれた外来種で、その当時にあってはまさにブラック・バスのように日本を席巻した存在だったということ。
 また、当時は日本の国家の形成期で、政治的意図をもって広められたということは、その当時の感覚でいえば、牛肉とオレンジみたいなものだったんです。
 なにしろそのおかげで、採取文化の縄文文化は、すっかり姿を消してしまいました。弥生文明が縄文文明を直接攻め滅ぼしたわけではないんですが、文明一つ淘汰させてしまう力をもった、強い輸入パワーだったんです。

 映画『ギャング・オブ・ニューヨーク』を見ましたか? 映画の舞台は19世紀のニューヨークで、そこでは、せいぜい祖父母の代からアメリカに入植していて、アメリカ生まれであったために自分たちを「ネイティブ」と名乗るアメリカ人と、遅れてアメリカに渡ってきた「輸入人間?」とのあいだで抗争が起こったことを描いた映画でした。後から来た方はカトリックだったというのもあって、WASP系の「ネイティブ」は、本当のネイティブ(インディアン)なんて頭から消滅して(笑)、アイルランド系をよそ者呼ばわりです。
 お米と他の食べ物を「日本の伝統食」「明治以降(あるいは戦後)入ってきたものは外来食」って分けるのって、どうもそれと似ているように私は感じます。どちらも「ネイティブ」とは言えないのに、ちょっと先に入ってきたものが、1000年やちょっとの時間の差を気にしている。

 先日「絶対合わないジグソー・パズル」のときに書いた「エデンの園から追い出されて、帰りたいけど帰れない」という状態になったときに、人間というのは、どうも「ふるさと」を求める生き物になってしまったんじゃないか、と、私は思っています。どこかに帰属しないと、どこかで「母なる大地が私を迎え入れ、愛してくれている」というストーリーを作っておかないと、不安なんじゃないか、って。

 じゃあなんでそんなに、お米を「ネイティブ」とまで尊ぶ必要があるのだろうか? (なにしろ日本ではお米は今でも国家宗教です。天皇のものすごく大事なお仕事は、皇居内で新嘗祭に使うお米を作ることです。)
 これはお米だけでなく穀物全体の特徴になりますが、それは、「お米」というのは、「お金」とすごく似ているんです。

 ひとつは、価値の保存性。もう一つは、価値が増える投機性です。


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posted by 石塚とも at 10:28| Comment(7) | 穀物とお金 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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